INNOVATION STACK
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解決したい問題があって、それを既存の方法のコピーでは解決できないとき、ほとんど他に道がないから仕方なく自分で創るのがイノベーションだ。そしてそれは、単発の思いつき、ではない。一つのイノベーションは、他のところに無理や課題を引き起こす。そしてそれを解決するためには、また別のイノベーションも必要となる。それがまた生み出す課題のために、さらなるイノベーションが……気がつくと、無数のイノベーションが絡み合っている。どれか一つだけ真似しても意味がない。その数多くの仕組みすべてのまとまりが価値を持つ。 これが彼の述べる、イノベーションスタックとなる。それが製品やサービスの価値を創り、アマゾンすら撃退できる強さを生む!
――訳者解説より
はじめに
第1部 完璧な問題を解決する ︱ スクエア社の物語
第1章 起業家と完璧な問題
正しい言葉/完璧な問題/城壁都市/起業家とビジネスパーソン
第2章 ボブとピラミッドたち
ジャック登場/冬のブレーンストーミング/汚いお金/ちょっとした犯罪/自白/大規模犯罪/ボブ登場/目に見えない犯罪
第3章 筋を通す
市場の果て/スクエア社の初日/決定的瞬間/1.ソフトウェア/2.カードの読み取り/3.さあさあご注目! /4.お金を動かす/5.詐欺/会社の命名
イノベーションスタックの進化/スクエアのイノベーションスタック/やるしかない
第5章 ケリをつける
飢えて喰われる/ホットドッグとシャンパン/完璧な捕食動物/のぞき穴の外に巨大鼻孔/鼻からつま先まで
第6章 コピーのコピー
ほとんどあらゆるビジネス問題への答え/リリーフ役の起業家精神/起業家精神を教えるなんてそもそも無理なの?/カンパニーのできあがり/不安がいいときもある
第2部 専門家というウソ ︱ 先人のイノベーションスタックに学ぶ
第7章 レモネード
第8章 どこでも起業家
スペインのベンチャー資本/多少のタイムトラベル
第9章 バンク・オブ・イタリー
A・P・ジャンニーニ/大震災/バンク・オブ・イタリーのイノベーションスタック/わが初のメンター
第10章 蹴り出された少年
イケア/底辺への競争/蹴り出され閉め出され/イケアのイノベーションスタック/家具をまっとうに
第11章 雲の神さま
連邦航空会社保護制度/サウスウエスト航空のイノベーションスタック/楽しい!
第12章 いつ
マエストロの教え/「いつ」を学ぶ/時間を単純化/最初の失敗/欠けた要素/待つ方法/正しいタイミングは早すぎるように感じられる/可能性の地平線/イノベーションスタック駆動の変化/準備万端/成長するとき/長い待ち行列の危険性
第3部 イノベーションの物理学
第13章 スタックの攻撃
焦土/アマゾンの後で/攻撃の数学/イノベーションの絡み合い/テッドは死んだ/相手にするな/顧客に専念
第14 章 見えない軍団
アドプターとアダプター/新しいアイデアvs.改変したアイデア/知識の呪い/言語の重さ/フィードバックの失敗/「すげえ」の瞬間/イケア効果
第15章 低いけれど、最低ではない
低価格と最低価格/低価格vs.競合/なぜ低価格?/低価格と顧客の信頼/低価格と企業の方向性一致/低価格と競争優位/ちょっと待った、まだあるんです/いくつか反面教師を/どこまで下げる?
第16章 破壊の破壊
新たな死語/破壊=不可解/市場規模は?
第17章 どんな気分?
謙虚さ/恐怖/恐怖と学習/フィードバック/イノベーションの量/専門家というおとぎ話/頑固さ/完璧な問題
第18章 ゼロに逆戻り
大風呂敷/振り出しに戻る/新たな城壁都市を後に/小さく始めろ/読まなかったことにはできない
原著の書評
Amazonの参入をどう防いだかの研究成果
ジム・マッケルビーが本書で定義する「起業家」とは、真のリスクテイカーです。実を言えば現代のスタートアップ創業者は(例えばクリストファー・コロンブスのような真のリスクテイカーと比べて)それほどリスクを取る必要がありません。ベンチャーキャピタルから資金調達したお金は返す必要ないんですから。もちろん、資金調達できるまで持っていくには多くの労力や個人的な資産も必要かもしれませんが。ヨーゼフ・シュンペーターの頃、企業家は特別な人たちでした。クレイジーと同義語でした。 ジム・マッケルビーが本書で定義する「イノベーション」とは、実現したいことをやるためには既存のやり方をコピーできないため、仕方なく生み出す手法です。ビジネスで成功する簡単な方法はコピーすることです。自然の法則はコピーです。コピーしてできるなら、それに越したことはありません。しかし、「起業家」は既存のルールがない未知の領域に(仕方なく)足を踏み入れるため、既存のやり方ではできないことがあります。既存のやり方とは違うやり方、それが「イノベーション」です。 4つの事例
サウスウェスト空港
Square
簡単にSquareのイノベーションスタックの一部を紹介します。
解決すべき課題:これまでクレジットカードが使えなかったお店がクレジットカードを使えるようにする。そのために……
簡単にする(One Price:すべての人に同じ取引手数料)。しかし、小さな取引ではお金を損する。そのため、取引量を増やす必要あるため……
サインアップを無料にする。それを維持するためにはコスト削減が必要で……
ハードウェアを安くする。当時のクレジットカードリーダーは950ドルかかっていたが、Squareでは原価を0.97ドルまで抑えることに成功した。しかし、あまりにも安いので何か仕掛けがあるのではと不審に思う人たちもいた。そのため……
契約をなくした。いつはじめてもいいし、いつ止めてもいい。契約で利用者を縛ることをやめた。はじめるのにSquareと話す必要もない。しかし、それだけでは十分なコスト削減ではないので……
電話サポートをやめた。しかし、そのためには顧客が電話する必要がないようにしなければいけないので……
使いやすい美しいソフトウェアを開発した。直感的で使い易ければ電話して使い方を聞く必要はない。しかし……
6まで紹介しましたが、実際には14まであります。
この本は前半がイノベーションスタックに関する事例を含めた詳しい解説になっていて、後半はジム・マッケルビーの個人的な考察というかエッセーっぽい内容になっています。